71歳の法学者が、わずか4ヶ月でロマンス詐欺に925万円を騙し取られた。本人が赤裸々に語った一部始終が、知識と理性がいかに無意味になるかを浮き彫りにしている。
「私は自分が賢い人間だと思っていました」。名誉教授の絞り出したその言葉は、自らの陥落を直視する者の痛切さに満ちている。婚約破棄という転機から、詐欺師との会話での呼称が「高倉さん」から「兄さん」へと変わる瞬間——その微妙な関係性の変化が、彼の判断力を奪っていった。
所々不自然な日本語さえ、すでに理性を失いつつあった彼には致命的な警告信号にはならなかった。愛情と信頼が、知性さえも蝕む恐ろしさ。借金を重ねて925万円を入金する一部始終は、高学歴であることが詐欺被害の防波堤にならないことを証明している。
誰もが陥る可能性のあるこの罠——学問の世界で研鑽を積んだ者ですら逃げられないロマンス詐欺の深刻さは、いま日本社会に静かに広がっている。

